【COLUMN】これからの土木の役割について『半市場経済」を読んで。
土木や都市計画の分野から「経済」を考えると「経済活動を支える優れたインフラを整備するのが私たちの役割である」ということになる。道路や鉄道、空港、港湾、河川、公園等を整備し、区画整理や再開発を行って土地をつくって、戦後日本の経済成長を支えてきた自負もある。とりわけ景観の分野についても、日本にとって大事な産業になりつつある観光産業を支えるインフラ整備の文脈で取り組まれることが多く、構造的には類似している。
しかし、この「土木や都市計画は経済活動を支えるインフラをつくる」という役割設定は、現代においてどこか「ワクワク感」が足りない。いつまでその「正当性」によって業界を維持できるのか不安も感じる。
『半市場経済』(角川新書)はそうした疑問にひとつの方向性を与えてくれる良書である。さすが、内山節さん!現代社会の課題は、近代によって分離された「経済」と「労働」を一体化させて、「働くこと」を「企業の役に立つこと」ではなく、「社会における役割を果たすこと」にしていくことだと説く。そして、現代の若い世代は、意図的かどうかは別にして全国各地でそうしたことに既に取り組み始めている、と。
「カフェ」「ゲストハウス」「広場」….そうした多様な交流の舞台となる自由な空間がまちづくりのキーワードになっているのも、若者たちが、地域において「働くこと=地域の役に立つこと」を実践する成果だろう。こうした文脈における土木や都市計画は「経済のためのインフラをつくる」のではなくて、「経済と労働が一体化したライフスタイルを支える」ことが役割になるのだろう。50年後、100年後にも残る、愛されるものづくりを実現するためには、経済のためのインフラづくりからの脱却が求められている。内山節さんの本にはいつも力をもらいます。オススメです。
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