長崎市景観専門監

概要

 2012年の暮れに長崎市・田上富久市長より依頼の連絡をいただきました。趣旨は、(1)長崎市が行う公共事業のデザインに関する指導と管理、(2)市職員の人材育成の二つの役割を一体的に行う監修者(スーパーバイザー)として庁内(インハウス)に入ってほしいということでした。

 職名は上記のミッションを表現した「景観専門監」を私から提案し、2013年4月1日に就任しました。階級は次長級(2023年度から部長級)、いずれの部局にも属さずにあらゆる部局の事業を監修する立場です。受入担当はまちづくり部景観推進室。

 自治体において景観に関するこのようなポストはおそらく全国でも類をみないでしょう。やりがいを強く感じながら長崎市役所に通い12年目を迎え、市職員と協議する日々を現在も続けています。


『長崎市景観レポートvol,1 2013-2017』

 2018年4月、それまで五年間に渡る長崎市景観専門監の活動をまとめた『長崎市景観専門監レポート2013-2017』を、田上市長に提出しました。専門監の仕組みと取組み事例について豊富な図、写真を掲載して40ページに渡って紹介しています。出島、駅、新市庁舎、岩原川、平和公園、稲佐山、鍋冠山、深堀、遠藤文学館、夜景等、監修したプロジェクトは大中小あわせて100を超えます。全てがたくさんの方々との協働作業。景観専門監自体がたくさんの方々による「プロジェクト」だと思います。


『長崎市景観レポートvol.2 2013-2022』

 上記のレポートに引き続き、2023年3月に十年間に渡る長崎市景観専門監の活動をまとめた『長崎市景観専門監レポート2013-2022』を作成し、田上市長に提出しました。監修したプロジェクトは大中小あわせて200を超えました。


 専門監レポートの内容は、長崎市の公式HPにPDFファイルがアップされています。どなた様でもご覧いただけます。ぜひ下記ページからダウンロードしていただき、各自治体の景観行政、デザイン行政の参考にしていただければ幸いです。

【長崎市HP:長崎市景観専門監レポートを作成しました!


監修プロジェクト

1.大規模事業のデザインマネジメント

 ①長崎新幹線開通に伴う長崎駅周辺整備、②鎖国時代に出島に出入りしていた表門からのルートが復元される出島表門橋および出島対岸の出島表門橋公園整備、③新市庁舎整備が景観専門監が監修する三大プロジェクトです。

 これらのプロジェクトでは、委員会やワーキング、市民参加等の検討体制の企画、良い設計チームに仕事をお願いするための設計者選定プロポーザルの企画等の事業導入段階からプロジェクトマネージャーとして関わり、検討委員会委員やワーキング座長、シンポジウムや市民ワークショップのコーディネート等、多くの役割を担っています。

2.中規模事業のデザインディレクション

 稲佐山スロープカー、稲佐山ロープウェイ待合所改修、稲佐山電波塔ライトアップ、鍋冠山展望台整備、寺町・中島川地区および銅座地区の街路修景、岩原川周辺環境整備、深堀地区県警アパート跡地活用整備、平和町街路整備、遠藤周作文学館アンシャンテ、「潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録に関わる環境整備、野母崎地域田の子地区拠点整備、東山手・南山手地区歴史まちづくり事業、夜間景観向上(平和祈念像、大浦天主堂、眼鏡橋等のライトアップ)等の中規模事業についてはデザイン指導、庁内協議でのアドバイス、市民WSのコーディネートを行っています。

 これらのプロジェクトでは、市長から強く依頼のあった人材育成を意識し、OJTの機会にするとともに、プロジェクトの成果を職員研修でフィードバックしています。これまでで多くの若手・中堅職員が意識向上し、働き方が向上してきています。

3.小規模事業のデザイン管理

 水道管の塗装、wifi機器の設置、サイン整備、落下防止柵の設置等についても、大きさや高さ、設置位置、色、盤面デザイン等についてアドバイスを行っています。こうした小さなものでも工夫を積み重ねていくことで、風景は少しずつ良くなっていくことを実感しています。


掲載雑誌

1) 田上富久,高尾忠志,福井恒明,平永佐和子:景観の役割は「全体の統合」と「価値向上」, 土木學会誌, 第101巻第6号, pp.26-30, 2016.6

2)「市民力で「長崎」を表現 長崎市景観専門監インタビュー」,長崎新聞「長崎駅周辺整備特集」,2015.10.18

3)「未来のまちを”そうぞう”する」,広報ながさき 特集①,2015.10


メディア出演

 長崎ケーブルメディア なんでんカフェ「市っトクながさき シリーズ景観まちづくり」に2017年9月1日から出演し、監修事業について担当職員とともに紹介しています。これまで出演した40回以上の映像(1回の放送時間は約12分)はYoutubeの該当ページからご覧いただけます。